ドール撮影についての考察 |
って事なんですが、前回では人物撮影とドール撮影は似ていると書きましたが、同然の事ながら異なっている点も多数あります。 っていうより、ある意味では違うところが殆どだともいえるでしょう。
先ず、誰でも一番に思いつく違いは“ドールは動かない”ってことでしょうか?
まぁ〜 当たり前に過ぎる話ですが、これが撮影にとって利点となるか欠点となるかは撮る方の撮影スタイルや考え方によって異なるでしょうが、違いという点では一番大きなところだというのは間違えが無いところでしょから、先ずはここから考えて見ましょうか?
|
|
動かないドール・・・ |
“動かない”といっても色々な意味がありますが、一つは人間と違って固定したポーズから勝手に動かない(風で倒れるのは別として・・・汗)ってことで、これは撮影する方としては一般的にありがたい話で長時間同じポーズで撮影しても微動だにせず文句も言われないのは大変助かります。
さらに微動だにしないってことで、人間のポートレート撮影では難しい大口径レンズでの開放近接撮影という非常に被写界深度の狭い撮影でもフォーカスをミリ単位で厳密に合わせることが(三脚等でカメラを固定する必要も出てきますが)可能です。
ただ、“厳密なフォーカスが可能”ってことと出きるというのは別物で、可能である以上はフォーカスに対するハードルも当然高くなりますので撮影する困難さは人物撮影でもドール撮影でも変わりません。
また、ポートレートでは一般的には手前の目にピントを合わせますが人間よりも長い睫を付けていることの多いドールの場合は“睫と瞳の距離”でさえ被写界深度が数 mmという近接撮影時には気になる場合もあります。
|
|
動かないドール・・・2 |
もう一つの問題として、人間のポートレート撮影の場合は撮影者の指示やモデルの考えでポーズを変えながら撮影を行いますが、当然のようにいくら言ったところでドールは“動いてはくれません”のでポーズを考え実行するのは全て撮影者ということになります。 まぁ〜 助手がいれば問題の無い話ではありますが・・・
これは「目線をこっちへ」といっても「もう少し顔を上げて」といってもドールは動いてくれませんので、カメラを構えている場所からドールのところへ歩いていってポーズを変えて改めてカメラを構えなおす面倒な作業を頻繁に強いられることになります。 特に手持ちでの撮影がメインの私のような方は身に染みて不便を感じることが多いでしょう。
何といってもポートレート撮影では目線の位置というのは表現力として非常に重要ですので、“目線を動かしてくれない”というのは、狙った構図になるカメラ位置とドールのポーズ、狙いの目線を全て整えるのは非常に大変な作業で、下手をすると十数回もドールとカメラの間を行ったり来たりすることになります・・・
|
|
動かないドール・・・3 |
動いてくれないってことでは、ポートレートでは目線の動きと同じように重要な“顔の表情”も見逃せません。 当然のようにドールは成型時に与えられた顔からメイク等で若干変化させる以外にはヘッド自体を変えない限り表情を変化させることは出来ません。
まぁ〜 ヘッドを交換できるというドールの利点を使って複数のヘッドを用意するという手もありますが、これも余程注意深く製作しないと人間の敏感な感覚では別人に見えてしまいますし、ドーラーにとっては“ドールは顔が命”ですので、消耗品とも考えられるボディと違い複数のヘッドを用意するということ自体が稀と考えられます。
そんなことですので、実際の撮影では“思い込みと思い入れ”と、撮影角度や照明等の“撮影方法”で表情を作ることになります。 それそれのドールにより様々に違いますが、自分のドールに慣れて撮影を続けると不思議と自然に表情を捉えられるようになるもので、これがドーラーとして個人のドールを撮り続ける利点でしょうか?
|
|
動かせないドール・・・ |
これは、ドールの種類によって違いは出ますが少なくともドールは人間よりも“可動域が狭い”ですからポーズの自由度は限定されます。 さらに、完全に自立するわけではないドールの場合は撮影場所やポーズが限定されますし、シリコンドールの重量も撮影の難易度を上げることになります。
実際問題として屋外の撮影をされている方は分かると思いますが“撮影場所まで歩いてくれない”というのは笑い話ではなくて切実な問題となります。 何といっても“ドール”はもちろん、カメラや三脚等の“カメラ機材”とレフ版やストロボ等の“照明機材”を全て抱えて撮影場所まで移動するのは苦行以外の何物でもありません。 機材を持ってくれとまではいいませんが、せめて自分だけでも歩いてくれれば本当に助かります・・・ いや、マジで・・・
さらに比較的可動範囲の広い60 aドールや1/6ドールでも、シリコンドールのように間接が外皮内にあるタイプ以外のドールでは“間接の不自然さ”も考えて撮影する必要がありますので、意外とポーズや撮影方法が限定されてしまいます。 そんなことで、似たようなポーズが繰り返されるってのも致し方ないことかと・・・(汗)
|
|
素材の違い・・・ |
これは一般的に使われるドールの素材である“ソフトビニール”や“キャスト”、それよりは人の肌に近いといわれる“シリコン”でも当然実際の人肌とは質感が違います。
ドールの素材として、オリエント工業のソフビシリーズ、ボークスのDD系、アゾン全般等の最も多く使われていると思われる“ソフトビニール”では、素材の成型色からある程度人肌に近付ける事が可能で色合いの問題はそれほど感じませんが、人肌よりも反射率が高いために強い光が当たると不自然なテカリが発生します。 光を弱めるようにディフューズさせるか人間用のファンデーション等である程度軽減させることが出来ますので工夫してください。
次いでボークスのSD等に使われている“キャスト”ですが、成型時に反射を防止するようにマット加工されているために光の反射は自然な場合が多いですが、最近のものはUV加工されているとはいっても紫外線による黄変が多くみられる場合もありメイクや画像のレタッチ等で工夫する必要があるかもしれません。
最後に等身大ドールに多く使われている“シリコン素材”ですが、質感は最も人肌に近いとはいっても染色方法により色合いは人肌に近いとはいえない場合もみられます。 オリエント工業等多くのメーカーで使われる“染料系”での着色では透明感のある自然な色がでますが、逆光時などではシリコン素材を光が透ける問題があります。 もう一つLEVEL-D等でみられる“顔料系”の着色の場合はマットな人肌に近い質感がでますが、光がシリコン内の顔料で反射する際に思わしくない発色をする場合があり不自然さも感じることがあります。 実際、人間はこの辺りの違和感には敏感で、人肌の場合は光源が違って様々な色が付いても気にしませんが、ドールを見る場合は僅かな色の変化にも不自然に感じるようです。
|
|
ウィッグ・・・ |
ドールの場合は人と違って(一部例外はありますが・・・汗)髪の毛は“ウィッグ”で表現されますが、一部の高級品を除いて一般的には“ナイロン素材”ですからどうしても質感の違いは出ますし、静電気等により劣化も早いです。 特にロングヘアーの取り扱いは大変ですので等身大ドールではショートヘアーを選ぶ人が多いようです。
さらに髪型や撮影位置によっては“モミアゲや襟足がない”というのが思った以上に不自然に感じる場合もありますので、ショートヘアーや和服等でのアップヘアーの場合は撮影時の工夫が必要になります。
ウィッグも簡単に取り替えることが出来てドールのイメージを変えることが出来ますので、最初は気に入った物を求めて複数のウィッグを取り替えることも多いですが、一旦ドールのイメージが固定されてしまうとキャラクターを不必要に変えずにウィッグを変えるというのは結構大変ですので、劣化に備えて気に入ったウィッグは複数用意しておくと良いでしょう。
|
|
最後に・・・ |
取り合えず、思い付いた人物とドールの違いを書いていきましたが、当然のように人によって撮影スタイルは様々で“ポートレートのように撮りたい”という方も多いでしょうが、“ドールとして綺麗に撮りたい”という方も多数居られるでしょう。
それにより“違いを抑えて”撮影する場合と“違いを強調して”撮影する場合があるでしょうが、それぞれのドールの特性と撮影者の撮影スタイルを考えてバランスを取っていくことになりますね。
っということで今回は終わりですが、思いつくことがありましたら随時追加していきますので宜しくお願い致します・・・
|
|
|