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ドール撮影の工夫

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ドール撮影についての考察

 って事なんで、前回でドール撮影と人物撮影の違いについて述べたわけですが、違いの中で利点は良いとして欠点(問題点)は工夫して乗り越えていく必要がありますので少し考えて見ましょう。

 今回のコーナーでは大まかに、撮影に入る前の“ドールの準備”と、撮影段階での“屋内撮影”“屋外撮影”に分けて順に考えていきます。

 
  ドールの準備・・・

 先ずはドールでも人物でも一部の撮影分野以外では撮影以前に“衣装を着せる”必要が出てきます。

 当たり前の話なんですが、これがドールの場合には結構な問題点が出てきます。 ドールの場合はソフビなどの無可動なドールはもちろん、一応は可動式となっているシリコンなどのドールでも可動範囲が実際の人間に比べれば狭いために衣装によっては簡単に着せられないものも多数出てきます。

 上着については、前後などにボタンやファスナーで開閉できるタイプの衣装は比較的簡単ですが、Tシャツやセーターなどの被るタイプの衣装は腕を動かすことのできない“一体式ソフビドール”や腕を頭上へ大きく上げることが困難な“シリコンドール”にとってはハードルが高い衣装で、着せるには少し大きめのものを選んだり加工する等の工夫をする必要がでてきます。

 実際には、着せ辛い衣装を様々な工夫と苦労をして着せるよりも、背中から写すシチュエーションが少ないドールの場合は、あっさりと“背中を切ってしまう”方が結果的に遥かに楽ですし、切った背中部分は大き目のクリップ等で留めてしまえば見た目は変わりませんし、どうせサイズ調整する必要が出てくる場合か多いですから一石二鳥です。

 また、一般的に実際の女性よりもスタイルの良いであろうドールの場合は、巨乳タイプのドールなどは人間と違って潰れないバストと相まって上半身の衣装にも苦労することが多いですが、ドールとしては大人しいスタイルのドールでも意外とウエストの細さで苦労することになります。

 これは、ウエストサイズに合せて子供用などのスカートやパンツを選んでしまうと“ヒップや太ももが通らない”って事態が発生します。 ですから、ウエストにピッタリサイズの衣装を選ぶのじゃなく1〜2サイズ大き目のものを選んで最終的にウエストは後ろで詰めるっと考えた方が着せやすく綺麗に収まる場合が多いですし、サイズも豊富です(実際ウエスト50〜55センチ前後なんて一般女性は滅多にいません・・・笑)から選ぶのも楽になりますよ。

 
 室内撮影の準備・・・

 先ず最初にDPH芦別ギャラリーへ来られた等身大ドーラーさまでも一番多いトラブルを書いておきます。 初めて自宅以外で撮影するときに忘れがちですが、“靴”を忘れずに準備したか確認してください。 えっと思うでしょうけど自分を含めて結構多いですし、いくら椅子に座らせるし足元までは滅多に写さないとはいっても靴を履いていないと締まりませんよ。

 さらに靴ついでに、足首に可動部分のないソフビドールの場合には裸足で直立する角度に足首がなっていますので、余り“ヒールの高い靴”を選ぶと前のめりになって直立が困難になることもありますので注意が必要です。

 また、シリコンドールの場合は座っての撮影がメインになると思いますが、膝が綺麗に揃わないことも多いですから見えないスカートの中で太ももを縛る“ベルト”や、イスに座らせたときに滑らないように“滑り止めシート”等を用意すると良いでしょう。

 
 室内撮影の照明・・・

 実際に室内での撮影に入ると、“ポーズ”“背景”を選ぶのは勿論ですが、人間と違って自ら表情を変える事が出来ないドール撮影にとって“撮影位置”“レンズ”それと“照明”を工夫して表情に変化をもたせることも大事になってきます。

 ただ、“撮影位置”“レンズ”で変化を付けるといっても、ドールによっては綺麗に見える撮影角度が限定される場合も多いですし、撮影位置によって大きく表現に変化を付ける事のできる“広角レンズ”は大きく付くパースによって撮影の難易度が高く、一般的には変なパースの付き辛い“中望遠系のレンズ”を選ぶ場合がどうしても多くなりますので撮影位置で表情を変化させるのは益々難しくなってきます。

 そこで、消去法により残ったのは“照明による効果”となるわけですが、完備されたスタジオでの撮影でなければ大規模な照明機材を使用するわけにもいきませんから、照明機材といっても一般的に使えるのは“ストロボ”“レフ板”ということになります。

 そんなことで、今回は“レフ板”を使った“照明効果”を先日のDPH芦別ギャラリーで簡単に試してきましたので、少しご紹介したいと思います。

 撮影環境としては、ギャラリー内は白熱球色蛍光灯のボール型電球で照明されており、モデル左側の窓より外光(はれ)が入っています。 さらに、その外光を60 cmのレフ板で受けておりますので照度差により背景の書棚はほぼ真っ暗となっております。

いつみ
まぁ〜 少し顔が暗いけど、普通の写真ねゞ
Karasu
はい。 普通に体の正面の下方から上に向けて60°程度の角度でレフ板を当てていますので、顔から見ると右45°って角度になりますでしょうか?
いつみ
アイキャッチが弱いのと、左頬の髪の影が気になるわねゞ
Karasu
ああ・・・ 髪の影は今回のテーマには関係ありませんので・・・(汗)
EOS-1DsV Carl Zeiss P85/1.2 1/8 4.0(100)-0.3 4800k
いつみ
ずいぶん顔全体が明るくなったわねゞ アイキャッチもしっかり入っていいんじゃないのゞ
Karasu
はい。 これは、角度は上の写真と変わりませんが、少し体に近付けてみましたのでレフ板の光量がアップしていますね。
いつみ
その分、立体感が減った感じがするのと、左側の髪のハイライトが押さえられたわねゞ
Karasu
そうですね〜 一般的には一番見やすい写真でしょうか?
EOS-1DsV Carl Zeiss P85/1.2 1/10 4.0(100)-0.1 4800k
いつみ
顔が明るい上に立体感も出ているけど、変な立体感に感じるわねゞ
Karasu
今度は、距離はそのままに、もう少し顔の正面方向へ回してみましたが、顔の下からの光が強くなりましたので俗に言う“お化けライト”という怪談話のライティングに近くなってきましたでしょうか?
いつみ
顔が白く見えるから、完全に悪いわけじゃないわねゞ
Karasu
はい。 もう一つ別のレフ板を横から当てて立体感を補助してやれば良くなるんじゃないでしょうか?
EOS-1DsV Carl Zeiss P85/1.2 1/10 4.0(100)-0.1 4800k
いつみ
今度は、ずいぶんキツイ感じに写ったわねゞ
Karasu
はい。 レフ板を更に回して顔の正面よりも若干左側へ持っていきましたが、顔の凹凸が強調されていますのでキツイ感じに見えますね。
いつみ
男性のポートレイトならいいかもしれないけど、女性には嫌われると思うわよゞ
Karasu
まぁ〜 これも、右側から弱いレフを当てれば印象が変わってくると思いますがね〜
EOS-1DsV Carl Zeiss P85/1.2 1/10 4.0(100)-0.1 4800k
 
 屋外撮影の準備・・・

 動いてくれないってことでは、ポートレートでは目線の動きと同じように重要な“顔の表情”も見逃せません。 当然のようにドールは成型時に与えられた顔からメイク等で若干変化させる以外にはヘッド自体を変えない限り表情を変化させることは出来ません。

 まぁ〜 ヘッドを交換できるというドールの利点を使って複数のヘッドを用意するという手もありますが、これも余程注意深く製作しないと人間の敏感な感覚では別人に見えてしまいますし、ドーラーにとっては“ドールは顔が命”ですので、消耗品とも考えられるボディと違い複数のヘッドを用意するということ自体が稀と考えられます。

 そんなことですので、実際の撮影では“思い込みと思い入れ”と、撮影角度や照明等の“撮影方法”で表情を作ることになります。 それそれのドールにより様々に違いますが、自分のドールに慣れて撮影を続けると不思議と自然に表情を捉えられるようになるもので、これがドーラーとして個人のドールを撮り続ける利点でしょうか?

 
 屋外撮影の照明・・・

 これは、ドールの種類によって違いは出ますが少なくともドールは人間よりも“可動域が狭い”ですからポーズの自由度は限定されます。 さらに、完全に自立するわけではないドールの場合は撮影場所やポーズが限定されますし、シリコンドールの重量も撮影の難易度を上げることになります。

 実際問題として屋外の撮影をされている方は分かると思いますが“撮影場所まで歩いてくれない”というのは笑い話ではなくて切実な問題となります。 何といっても“ドール”はもちろん、カメラや三脚等の“カメラ機材”とレフ版やストロボ等の“照明機材”を全て抱えて撮影場所まで移動するのは苦行以外の何物でもありません。 機材を持ってくれとまではいいませんが、せめて自分だけでも歩いてくれれば本当に助かります・・・ いや、マジで・・・

 さらに比較的可動範囲の広い60 aドールや1/6ドールでも、シリコンドールのように間接が外皮内にあるタイプ以外のドールでは“間接の不自然さ”も考えて撮影する必要がありますので、意外とポーズや撮影方法が限定されてしまいます。 そんなことで、似たようなポーズが繰り返されるってのも致し方ないことかと・・・(汗)

 
 素材の違い・・・

 これは一般的に使われるドールの素材である“ソフトビニール”“キャスト”、それよりは人の肌に近いといわれる“シリコン”でも当然実際の人肌とは質感が違います。

 ドールの素材として、オリエント工業のソフビシリーズ、ボークスのDD系、アゾン全般等の最も多く使われていると思われる“ソフトビニール”では、素材の成型色からある程度人肌に近付ける事が可能で色合いの問題はそれほど感じませんが、人肌よりも反射率が高いために強い光が当たると不自然なテカリが発生します。 光を弱めるようにディフューズさせるか人間用のファンデーション等である程度軽減させることが出来ますので工夫してください。

 次いでボークスのSD等に使われている“キャスト”ですが、成型時に反射を防止するようにマット加工されているために光の反射は自然な場合が多いですが、最近のものはUV加工されているとはいっても紫外線による黄変が多くみられる場合もありメイクや画像のレタッチ等で工夫する必要があるかもしれません。

 最後に等身大ドールに多く使われている“シリコン素材”ですが、質感は最も人肌に近いとはいっても染色方法により色合いは人肌に近いとはいえない場合もみられます。 オリエント工業等多くのメーカーで使われる“染料系”での着色では透明感のある自然な色がでますが、逆光時などではシリコン素材を光が透ける問題があります。 もう一つLEVEL-D等でみられる“顔料系”の着色の場合はマットな人肌に近い質感がでますが、光がシリコン内の顔料で反射する際に思わしくない発色をする場合があり不自然さも感じることがあります。 実際、人間はこの辺りの違和感には敏感で、人肌の場合は光源が違って様々な色が付いても気にしませんが、ドールを見る場合は僅かな色の変化にも不自然に感じるようです。

 
 ウィッグ・・・

 ドールの場合は人と違って(一部例外はありますが・・・汗)髪の毛は“ウィッグ”で表現されますが、一部の高級品を除いて一般的には“ナイロン素材”ですからどうしても質感の違いは出ますし、静電気等により劣化も早いです。 特にロングヘアーの取り扱いは大変ですので等身大ドールではショートヘアーを選ぶ人が多いようです。

 さらに髪型や撮影位置によっては“モミアゲや襟足がない”というのが思った以上に不自然に感じる場合もありますので、ショートヘアーや和服等でのアップヘアーの場合は撮影時の工夫が必要になります。

 ウィッグも簡単に取り替えることが出来てドールのイメージを変えることが出来ますので、最初は気に入った物を求めて複数のウィッグを取り替えることも多いですが、一旦ドールのイメージが固定されてしまうとキャラクターを不必要に変えずにウィッグを変えるというのは結構大変ですので、劣化に備えて気に入ったウィッグは複数用意しておくと良いでしょう。

 
 最後に・・・

 取り合えず、思い付いた人物とドールの違いを書いていきましたが、当然のように人によって撮影スタイルは様々で“ポートレートのように撮りたい”という方も多いでしょうが、“ドールとして綺麗に撮りたい”という方も多数居られるでしょう。

 それにより“違いを抑えて”撮影する場合と“違いを強調して”撮影する場合があるでしょうが、それぞれのドールの特性と撮影者の撮影スタイルを考えてバランスを取っていくことになりますね。

 っということで今回は終わりですが、思いつくことがありましたら随時追加していきますので宜しくお願い致します・・・

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