Welcome to My Doll House Refleet
Space Battleship YAMATO Episode 6
Top Column Gallery Making Present Link's Mail
 

Space Battleship ヤマト 2199

地球への帰還
 Episode 6.1 地球へ
To the earth


 真田技師長指揮のもと、20日間に渡って地球出航以来7ヶ月ぶりとなるイスカンダルでの本格的な船体修理を行うとともに、平行してスターシアより贈られた貴重な低濃縮ガミラシューム9,200トンの精製作業を進め、20トンの高純度濃縮ガミラシュームとして他の食料品等必要物資とともに艦内倉庫に積み込んだヤマトは、地球への誘いを頑なに断ったスターシア一人をイスカンダルへ残すと、イスカンダル星に残っているガミラスの軌道パネル都市を宇宙エレベーターとともに海面上空より波動砲で撃破!

 ガミラスによる最後の妨害を排除すると一路地球への帰還の途についた・・・


「間もなく最後のワープを実施します。
 このワープが終われば地球が肉眼で捉えられるはずです」

 船体修復時にイスカンダルの技術により改修改良されたコスモレーダーは1,000光年先まで捉えることができ、そのぶん伸びたワープ距離により順調に復路の航宙を続けてきたヤマトは、島航海長がヘッドセットを通して乗組員へのサービスとして行った説明の後に太陽系内へと達する最後のワープを実施すると、火星軌道の内側空間へ遅れている航宙スケジュールらかの無理を押した連続航宙により傷付き激しい疲れを見せるヤマトの巨大な船体が忽然とワープアウトする。


「通常空間へでました。
 周囲空間異常なし。 ワープ態勢解除します」

『波動エンジン通常整備に入ります・・・ 出力1/16。 補助エンジンへ切り替える』

『ワープ態勢解除! ワープ態勢解除! 全艦通常態勢』

 ワープ空間から抜けたヤマト艦内では、ここ数日のワープの度に細々とした不具合を起こしている波動エンジンを抱える機関部以外の総員配置が解除され、第一艦橋では舵を握る島航海長を除く全員がそれぞれベルトを外すと外部を見ることができる艦橋前面へ集まってくる。


「地球は?」

「あれじゃない?」

 古代は第一艦橋の当直士官に混じって艦橋前面窓を目を凝らして見詰めるが,、無限に広がる漆黒の宇宙空間を埋める無数の星の中から地球を見付けることができない。

「どこだ?」

「あの赤い星・・・」

 連絡のために搭乗員準備室から第一艦橋へ昇って来ていた森雪が、現役ファイターパイロットらしい視力で目敏く捕らえた前方の一点を見詰めながら指し示す方向を目で追った古代は、直ぐ横に寄り添うように歩み寄るとようやく地球らしき星を見付ける。

「そうだ・・・! あれだ! 地球だ!」

「地球が見えたぞ!!」

「帰って・・・ きたんだ・・・」

 艦橋前面窓の中央右よりに小さく微かに映った赤い星にヤマトの乗組員は歓声を上げお互いの肩を叩いて喜び合う。 赤く焼けた地球にこれほど感動するのは可笑しな話であるが、実際に一年近く地球を離れていたクルーにとっては懐かしい地球の姿であるのだった。
 


『・・・・・・ら・・・・・・ ・・・・・・・・・ほん・・・ ・・・・・・か?』

『・・・こちら地球・・・ 地球司令本部! ヤマトか?・・・ ヤマトなのか?!』

「地球司令本部より通信です!!」

 地球に残った人々が生きている何よりの証拠となる10ヶ月ぶりの地球からの入電に、相原通信士は自席の通信装置に飛び付くと頬を流れる涙を隠そうともせずに艦長代理古代を振り向き報告する。

「地球だ・・・ 間に合ったんだ・・・・・・ 俺たちは間に合ったんだ!」

 第一艦橋の乗組員たちも涙でくしゃくしゃになった顔で泣き笑いしながら、お互いに抱き合い肩を叩き合うなど、予定航程からの大幅な遅れによる人類の安否について、それまでの口に出せない押し潰されるような不安感から開放された、心の底から湧き上がる喜びに最早それぞれの感情を抑えることが出来なくなっていた。

「やった・・・ やったんだ! 地球は救われる!」

 地球のエネルギー不足を物語る激しいノイズに乱れる藤堂長官の姿は、ヤマトで長い旅を戦った人々と同じく11ヶ月の筆舌に尽くしがたい苦労を滲ませていた・・・

「こちら地球防衛軍所属宇宙戦艦ヤマト! 沖田艦長以下総員74名。
 現在、地球までの距離およそ30万宇宙キロの地点です!」

『総員・・・ 74名・・・
 そうか・・・そうか・・・・・・』

『沖田はどうした?』

 言葉をとぎさせた藤堂に代わって、右後ろに立っていたガッシリとした体格の高級将官が発した質問に、遥か空間を隔てたスクリーン越しの古代が沈痛な表情で答える。

「沖田艦長は、宇宙放射線病が悪化されて・・・ 静養されております」

『そうか・・・・・・』

(沖田、貴様は必ず帰ってくると約束した。 生きて帰ってこい、必ずだ!)

『そっそれで、成果は? 何か成果はあったのか?』

 スクリーンに映る藤堂長官はヤマト生存者数の影に無言で語られる苦難の航宙とガミラスとの激戦を思い一瞬目を閉じて言葉を詰まらせたが、絶滅の淵へと追い詰められた地球人類全ての命を一身に預かる地球防衛軍司令長官としての職責から姿勢を乗り出すと一縷の希望にすがるように問い掛けた。

「もちろんです、長官。 我々は放射能除去装置を手に入れました!」

『なっ 何?! 放射能除去装置を・・・!!
 本当か・・・ 本当に存在していたのか?』

 放射能汚染が進む地球の防衛に絶望に絶望を重ねるような日々を過ごしてきた藤堂長官は、夢としか思っていなかった放射能除去装置の話に現実に信じてよいのか分からず絶句した。


「はい!」

『そうか・・・ 沖田は賭けに勝ったんだな・・・
 良くやった・・・ 本当に良くやってくれた・・・』

 止め処なく湧き上がってくる感情を抑えられずに絶句したまま、ヤマト全乗組員と戦死者に対して心からの敬礼を先に送る藤堂地球防衛軍司令長官と、続く土方空間防衛総隊司令長官、背後では涙を流して互いに喜び合っていた地球防衛軍司令本部の総員が溢れ落ちる涙をそのままに、一斉に大統領へでも贈るような完璧な敬礼を捧げ続ける姿がヤマトのメインスクリーンに映し出される中、第一艦橋でもそれぞれに心からの応礼が行われる。

「間もなく・・・ 間もなく、我々は地球に到着します。
 それまで・・・ それまでどうか・・・ 耐えてください」


*   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *


 艦橋が喜びに沸き返る中、生命維持装置がたてる微かな電子音と酸素吸入器の規則的な音だけが聞こえる艦長室では、ベットへ横たわる沖田艦長の意識はワープ航法の苦痛に耐えるための鎮痛剤の投与で朦朧としていたが、モニターに映った懐かしい地球の姿に僅かに覚醒すると、傍らで付き切りの看護を行う佐渡酒造に静かで、それでいて確りとした口調で呟くように告げた。

「佐渡先生・・・」

「んっ んん?」

 同じようにモニターの中で少しづつ大きくなっていく赤い地球の姿に意識を奪われていた佐渡は、思いもしない沖田の突然の問い掛けに驚いたが、

「しばらく・・・ ワシを一人にしてはくれまいか・・・?」

「・・・・・・」

 沖田艦長の途切れ途切れに続く言葉に全てを悟った佐渡は、長年の戦友に最後になるだろう言葉を掛けるか僅かに悩んだが、結局何も言えずにベットに背を向けると無言で艦長室を出て行こうとした。

「先生・・・」

「んんっ?!」

「ありがとう・・・」

 沖田の言葉にビクリと反応し一瞬固まったように立ち止まった佐渡も、恐らく最後になるであろう言葉を背中で聞きながら静かに艦長室の気密扉を閉めると、ドアを背にして第一艦橋へのタッラルへ続く半畳ほどの狭い廊下に立ち尽くした。


「地球か・・・ 何もかもみな懐かしい・・・」

 肌身離さず持っていた数枚の家族の写真をベット脇に広げると力ない手で愛おしそうに指でなぞり、沖田十三はやっと宇宙戦艦ヤマト艦長 ― 地球人類16億人の生存への希望を一身に背負うという重責から離れると、最後に一人の男、一人の親へと戻っていった。

〈ワシの生涯に悔いはない・・・ 妻と良太郎に会いに行こう・・・〉

 沖田の脳裏に笑顔をたたえる家族の姿と、先に死んでいった戦友や部下達の姿が走馬灯のように蘇り頬を止め処なく涙が流れ落ちるが、次第に視界とともに意識も薄れていき、最後まで指でなぞっていた写真がベットから静かに舞い落ちる・・・


 

−人類滅亡といわれる日まで、あと36日・・・ あと36日−
 

 
 Episode 6.2 デスラーの報復
Retaliation of Desura


『全艦衝撃警報! 全艦衝撃警報! 外郭の気密を確認せよ!』

「どうした!!」

「7時方向に巨大な物体がワープアウト! 本艦は攻撃を受けています!」

 感傷に囚われていた第一艦橋に突然の大きな衝撃が走り緊急警報が全艦に激しく鳴り響く中、古代の慌てた問いにレーダー員席に付いていた太田航宙統制官の絶叫が木霊する。

「総員配置に就け!」

「了解!!」

『総員戦闘配置! 総員戦闘配置!』


 古代の命令で慌てて全ての乗組員が持ち場へ走りそれぞれに状況把握に努めるが、突然の思いもしない激しい攻撃に一方的に被害を受け混乱した艦内は只々翻弄され続ける。

「各部被害状況を報告しろ!」

「コスモレーダーフィールドアンテナ大破!」

『左舷パルスレーザー群壊滅!』

 敵の正確な位置を把握する以前にコスモレーダーを破壊されたヤマトは、反撃する手段もないまま無数のミサイルと長距離砲による攻撃によって一方的に艦の主要部を破壊されていく。

『艦尾左舷魚雷発射管機能停止!』

「第二砲塔沈黙!」

『左舷側誘導弾発射管損壊!』

 敵の連続した猛攻にさらされているヤマトは、レーダーに続いてミサイル発射機構を集中して攻撃されており、もはや敵の詳細な位置を確認できないヤマトに残された反撃の手段はブラックタイガー隊しかないが、息をつく間もないほどの連続攻撃に艦載機発進口を開けることもできない。

「第二副砲塔応答ありません!」

「第三砲塔大破!」

 ヤマトは反撃の手段もないまま主要兵装を次々に破壊され、強靭な装甲で覆われた主砲塔も左舷の敵方向を向いたまま口径46センチの巨大な砲身が折れた無残な姿をさらして沈黙している。

「第一艦橋被弾!」

「メインパネル機能不良!」

 猛烈な衝撃とともに打ち続く被弾に強固に防御された第一艦橋にも被害が発生し、前面窓上部に設置されているメインパネルが激しいノイズとともに突然消え艦橋内は非常灯の鈍い赤色に染められる。

『艦載機格納庫上部に被弾!』

「波動エンジンに異常反応!」

 今や回避能力だけが頼りとなってきているヤマトにとって致命的となるエンジン出力の低下を敏感に感じ取った島航海長は、反応が鈍くなった舵を必死に操りながら艦橋の騒音に負けない大声で報告を上げる。

「徳川機関長! 機関長!! エンジンは?」

『艦橋機関室。 波動エンジン・・・出力低下! 現在・・・復旧作業中・・・』

 機関室の徳川機関長からも大きな被害になっていると思われる咳混じりの苦しい報告がもたらされるが、突然の太田航宙統制官と徳川機関長の絶叫報告に掻き消される。

「艦首正面! 大型ミサイル!!」

「機関非常出力!! 全力回避!」

『メイン・パワーロスト!!』

『波動エンジン推力喪失! 補助エンジンへ切り替える!』

「避けられません!! 命中します!!」

 第一艦橋の誰もが大型ミサイルの命中衝撃に続く恐ろしい破壊と衝撃を予想して身を固めたが、それまで続いていた攻撃とともに突然の沈黙に包まれており奇妙な静寂にそれそれが顔を見合わせて訝しがる。


「敵ミサイル不発!」

「不発?」

 太田航宙統制官の不発報告に疑問とともにホッとした安堵感に一瞬包まれた第一艦橋へ南部砲雷長の絶望的な報告が響き渡る。

「ダメです!」

「どうした?!」

 先端部分を分離させた大型ミサイルはヤマトの波動砲口へそのまま突入すると、上下左右に広げたギアーで内側からロックすると砲口を完全に塞いだ。

「波動砲が・・・ 波動砲口が塞がれました・・・」

「何・・・?!」


「形式不明の大型艦、近付く! 10時方向距離80!」

 ヤマトの全ての武装を無力化した巨大な敵艦は徐々に方向を変えると、ヤマトの近接センサーに掛かるほどに接近してきた。

「80・・・?!」

「直ちに波動砲を復旧せよ!」

 第一艦橋の前面窓から直接見ることができる距離まで近付いた敵艦は、80宇宙キロ(2万4,000キロ)の距離からも肉眼で形が分かるという船というには巨大過ぎる天文学的な大きさであり、全員が言葉を失うなか真田技師長が呟く。

「軌道パネル・・・ 船だったのか?」

 接近してきた敵艦へ向けて第一砲塔が唯一残った中央の二番砲のみで有視界直接照準による速射を開始するが、僅か二発を放ったところで敵艦の激しい反撃により沈黙する。

「坂巻!!」

「全兵装沈黙!!」
 


「敵艦より通信が入っています・・・ メインパネル不良のため音声のみです」

『・・・・・・勝ったとでも思っているのかね? ヤマトの諸君』

 相原通信士の報告に続いて自動翻訳機により翻訳された、落ち着いて自信に溢れた口調の男性の声が第一艦橋へ流れる。

「誰だ! お前は?!」

『デァスラゥ・・・ 大ガミラス総統デスラーだ。 覚えておきたまえ』

 艦長代理古代の問いに答えて、声の主はガミラスの総統でデスラーだと告げるが、ガミラスはイスカンダル星での決戦で滅んだはずでは・・・

「ガミラスは滅んだんじゃないのか?」

『ふっふっふっ・・・ 大ガミラスは永遠だよ。 このデスラーもな・・・
 イスカンダルでの礼がしたくてね。 私は屈辱を忘れん男だ』

 常に人の上に君臨してきたことを感じさせる落ち着き払った総統デスラーと名乗る男は、続けて僅かに感情を含んだ口調で決定的な宣言を行う。

『もう、いつまでも待つのはやめにした・・・
 このまま移住計画を進めるとしよう』

「どういうことだ?」

『地球は間もなく浄化されるだろう・・・
 そこで新たな大ガミラス帝星の誕生を共に祝うといい』

 突然のように終了した通信と入れ替わるようにしてヤマトの近距離センサーが反応すると、様々な警告音と警告灯が静まり返った第一艦橋に溢れかえる。

「何が起こるんだ!?」

「何なんだ・・・ これは・・・?」

 第一艦橋の前面窓から見える宇宙空間では巨大なデスラー艦が地球方向へ向かって僅かずつ加速を始め、宇宙エレベーターの部分であった船体の一部が徐々に本体から分離しようとしている。

「強力な核反応! 途轍もないエネルギー量です!」

 近距離センサーの分析を慌てて行っていた相原通信士のデーター解析によると、デスラー艦から分離しつつあるヤマトの数十倍はある大型の物体は超巨大な遊星爆弾ともいうべき放射線強化爆弾らしく、デスラー艦とともに地球方向へ徐々に加速しながら着実に人類の破滅へと向かって進んでいく。

「何?」

「地球人類が・・・ 消滅する・・・」

「くっそー!」

 第一艦橋では、全ての乗組員が地球へ向かってヤマトの視界から遠ざかりつつあるデスラー艦を血走った目で睨み続けるだけで何もできない無力感に包まれていた。

「南部! あれを止めろ。 何としても打ち落とすんだ」

「無理です! もうヤマトには何も残っていません・・・」

 目前の巨大ミサイルから目が離せない古代は、そのまま直ぐ横にいる南部砲雷長に向かって無茶な命令を発するが、生真面目な南部は真っ直ぐに古代の方を向くと首を横に振りながら心底悔しそうに答える。

「波動砲は? 波動砲は、まだ使えないのか!!」

「砲口が塞がれているんです! 今撃ったら暴発します・・・
 ヤマトは木っ端微塵に吹き飛んでしまいます!」

「くぅ〜!! 」

 どうすることもできない鬱積に古代は隔壁に拳を叩きつけるが、気を取り直すと最後の拠り所としている沖田艦長のところへ向かおうとする。

「沖田艦長に指示を仰いでくる」

 艦長室へと向かおうと艦橋左舷後部のラッタルへ向かった古代は、丁度ラッタルを降りてきた佐渡酒造を見上げバッタリと目が合うが、その只ならぬ雰囲気に全ての状況を理解したが自分自身どうしても認めることができず信じたくない気持ちからの質問が口から出る。

「艦長は?」

 沈痛な表情で第一艦橋へ入ってきた佐渡は、古代の問いに静かに首を横へ振る・・・

「そんな・・・」


 

−人類滅亡といわれる日まで、あと34日・・・ あと34日−
 

 
 Episode 6.3 守りたいもの
The one wanting to defend


 波動砲は砲口が塞がれ、全兵装を破壊されたヤマトは既に廃艦と呼んでよいほどに破壊されており、艦内には全ての警報が鳴っているような喧騒に満たされていながら奇妙な静寂を感じさせる重苦しい雰囲気が広がっていた。

 ヤマト艦内で生き残っている乗組員の間にも、ともに過ごした多数(あまた)の戦友を失いながらも成し遂げた一年に迫る長く苦しかった旅の意味が目前で波を受けた砂楼のように脆くも崩れていくのを止めることができない、もはや成す術がない虚脱感と重苦しい空気が漂っており、全員が一言も発しない異様な沈黙が続いていたが・・・

「真田さん! ワーププローブは残っていますか?」

「ワーププローブ? そうか、やつの座標に打ち込めば・・・」

 古代の問い掛けに科学に対して天与の才能を持つ真田技師長は全てを理解した。

 ワープ航法にとってワープアウトした空間に他の物体が存在するというのは悪夢であり、絶対に避けなければならない基本中の基本であるが、逆に利用すれば一つの時空間を二つの物体が重なって占めることによる重時空反応は反物質との対消滅反応より桁違いのエネルギーを放出する究極の爆発となり、これで破壊できない物などこの世界に理論上も存在しない。

「しかし、こんな近距離で次元反応爆発があれば地球も只では済まんぞ!」

「ワーププローブ発射と同時にデスラー艦と地球の間にヤマトをワープさせます」

「ヤマトを盾にするのか?!」

 驚いて振り向いた島航海長の言葉に静かに頷いた古代に、直感的にエネルギー計算を行った真田技師長は顔色を変えて反論を行う・・・

「そんな爆発エネルギーにはヤマトだって耐えられんぞ!」

 数百宇宙キロという天文学的には極至近距離で数十ベガトンと予想される膨大な核反応による衝撃と猛烈な放射線を受ければ、どう楽観的に考えてもヤマトや乗組員が無事ですむとは思われない・・・

「それで地球が救われるなら文句はないでしょう・・・
 たとえそこでヤマトが沈んだとしてもガミラシュームは地球に降り注ぎます」

 地球のロッシュ半径軌道内でヤマトが撃破されれば、その破片とともに倉庫に積み込まれているガミラシュームも最終的には地球の引力に引かれて地表へ落下する。

「地球は救われる、か・・・ そうか、そうだな・・・」

 古代の決意と全てを理解した真田技師長は爽やかな笑顔を浮かべると、古代を見詰め何度も頷いた。

〈大きくなったな、古代〉

「やろう! 古代!」

 何としても地球を、愛する人を救う。
 例えそれが僅かでも可能性があるなら命を掛ける価値がある・・・
 真田技師長は火星域会戦での古代守の姿を古代進に重ね合わせていた。

「古代さん!」

「艦長代理!」

「古代!」

 真田技師長に続き周りに集まった第一艦橋のクルーを一人ひとり見詰めていった古代は、最後に航海長席に座る島と手を取り合って頷き合う。

「しかし、みんなが必要以上に危険にさらされる必要はない。
 作戦に最低限必要な人員以外は中央居住区に退避するんだ」

「これほど精密なワープは俺にしか出来ないぞ」

 古代の手を取ったままの島航海長は当然のように笑顔のまま力強く宣言する。

「艦長代理! 俺の航路計算がなくちゃ航海長でも無理ですよ」

「ワーププローブの制御は任せてくれ」

「技師長。 俺がターゲティングしますよ」

 島航海長に続いて太田航宙統制官、真田技師長、さらにブラックタイガー隊の加藤が志願するが、島航海長が驚いて反論する。

「加藤! それは無茶だ!」

「べつに死にに行くわけじゃない。 最後はヤマトの影に入るさ」

 島航海長の反論に軽口を叩くように気楽に答える加藤に被さって、空間騎兵隊の斉藤が真田技師長へ向かって話し掛ける。

「俺は艦内じゃ役立たずだけど・・・ 技師長! これを乗せてってくれよ」

 斉藤は首からいつも肌身離さず提げていた角の少し焦げた八幡様のお守りを外すと、少し照れながら真田技師長へ手渡した。

「火星域戦の地獄で俺を守ってくれたんだ、効き目は折り紙付きだぜ」

 火星域での戦闘で97%以上という信じられない戦死者を出した空間騎兵隊の生き残りである斉藤からのお守りに、普段は迷信など信じない科学者の真田技師長も神妙な表情で受け取った。

「斉藤・・・」

 斉藤と力強く握手した真田技師長は、受け取ったお守りを首に掛けると斉藤に笑顔を向けて頷いた。

『艦橋機関室。 ワシが漕がなきゃフネは進まんからなぁ』

「徳川さん・・・」

 第一艦橋での会話に被さって、機関室からは無数の被弾により不具合が悪化している波動エンジンをどうにか再始動するとともに、ギリギリの状態で何とかコントロールしている徳川機関長の笑いが混じった連絡が入る。


*   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *


「おやっさん! 自分達にも手伝わせてください!」

「お前たち・・・」

 艦橋との連絡を終え、洗いざらした制服から真新しい上衣へ着替えたところへ突然運転室へ飛び込んできた藪たち若い機関員を驚いたように振り向いた徳川機関長は、ふっと優しい笑みを浮かべて共に戦ってきた部下達を見詰めると静かに顔を横へ振った。

「いいか・・・
 これからの地球は、お前たち若い者が背負っていかなきゃならん。
 いいから、ここはワシにまかせろ」

「おやっさん・・・」

「おい、おい、泣くやつがあるか・・・ 何も死ぬと決まったわけじゃないんだ」

 着慣れないプレスの効いた制服上衣の袖をいつものように無意識に捲り上げながら、男泣きする部下達を見詰める徳川の瞳にも零れ落ちそうな涙が溢れていた・・・・

「・・・・・・」

「いいから、さっさと中央居住区へ行くんだ・・・ これは、命令だぞ」


*   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *


「古代さん! 自分も・・・」

「南部! お前は中央居住区に残る人員の最上級者だ。
 もし俺たちが倒れたら、お前がヤマトの指揮を取るんだ! 頼んだぞ!」

 思い詰めたように申告する南部砲雷長に対して頷いた古代は、ずっと直属の部下として苦しい旅を過ごしてきた南部の両肩に手を置くと穏やかに諭すように語り掛けた。

「艦長代理・・・」

 ヤマトの主砲をはじめとした主要兵装の製造にも深く関わった南部重工業の御曹司として育った南部康雄にとって古代は生まれて初めて区別なく接してくれた人間であり、その言葉に黙って頷くメガネの奥の両目には涙が滲んでいた。

「うむ・・・
 それじゃ、南部は砲術科と宙雷科を使って艦首魚雷発射管と電路の作動を確認。
 真田さんは、工作科から人を出してワーププローブの準備をお願いします。
 井之上は、船務班全員で乗組員の避難を確認してくれ。
 佐渡先生、負傷者の避難を宜しくお願いします・・・」

「わかった・・・」

「何か質問は・・・? よし! 総員掛かれ!」

「了解!」

 艦長代理古代の命令でヤマト乗組員のそれぞれが最後の持ち場へ向かうが、特に作業はなく少し遅れて背を向けた斉藤を近付いた真田技師長が呼び止める。

「斉藤! ちょっと頼みがあるんだがな・・・」

「何だい技師長・・・ 改まって?」

「中央居住区へ行く前に中央倉庫へ寄って欲しいんだ・・・」


*   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *


(沖田艦長・・・ ヤマトを地球へ戻せず申しわけまりません・・・)

 任官以来、乗艦を一度も沈めたことがなかった沖田提督と始めて指揮したその艦を沈めようとしている自分。

 この判断が本当に指揮官として最善なのか?

 頭の中で繰り返される沖田の言葉をさえぎった古代は、軽く閉じられていた瞳を静かに開く・・・


(意外と広いんだな・・・)

 乗組員がそれぞれの持ち場に去り、島航海長と太田航宙統制官の三人だけとなったガランとした第一艦橋を一瞬自分の目に焼き付けるように静かに見渡した艦長代理古代は、続いて自らコム端末を操作すると地球防衛本部を呼び出した。

「地球防衛軍司令本部! 藤堂長官、聞こえますか?」

『こちら地球防衛軍司令本部、藤堂だ。
 地球へ向かう大型の誘導弾が見えている。 古代、状況はどうだ?』

 さすがに戦闘中の最高指揮官らしく内心の焦りや不安を微塵も感じさせない冷静な声で古代からの通信に答える藤堂長官であったが、続く古代の言葉に思わず声が大きくなる。

「敵ミサイルは我々が何としても迎撃します!
 しかし、その結果ヤマトが行動不能になる可能性があります・・・」

「その時は、本部の指令でヤマトを自沈させて下さい!」


『何を言うんだ! 古代!!』

 古代の申し出に驚いた藤堂長官は慌てて否定するが、古代の真剣な表情に返す言葉を失っていく。

「我々は全力で迎撃を行いますが大破したヤマトが地球へ落下すれば波動エンジンの爆発で地球は壊滅的な被害を受けてしまいます。 長官! 最期のお願いです! 頼みます!!」

「古代・・・」
 


「加藤! 退避する座標とタイミングを間違えるなよ!」

『艦長代理! いつまでも俺をひよっこ扱いしないでくださいよ』

 古代の通信に苦笑いを返した加藤は、コスモゼロのコックピットで最後の点検を済ませると後席に乗り込んで準備を進める真田技師長を振り返った。

「技師長! 用意は良いですか?」

「命は預けた! いつでもいいぞ!」

「ワタシハ完璧。 何ヲヤラセテモ役ニ立ツ」

 元々試作機だったミツビシ・イシカワジマ零式宇宙艦上戦闘機コスモゼロは複座として作られていたし、偵察用特殊機RF-96Aステルスタイガーに匹敵する高度なステルス性能を発揮すればガミラスのレーダー探知を逃れて接近できる可能性が高い。

「分かったから、少し黙っててくれよアナライザー」

『了解! コスモゼロ発進よし!』

 長期の連続使用により著しい疲労を見せる波動エンジンに鞭打った全力駆動により限界加速を掛けたヤマトは、前方へ回した右舷の超電磁カタパルトから、慣性制御がなければ跡形もなく潰れてしまうだろう激烈な加速により80宇宙ノットに迫る凄まじい合成速度でコスモゼロを一瞬で打ち出す。

 ガミラス艦のレーダー探知を避けるためにアナライザーも停止し、エンジンは一切使用せずにステルス性能を限界まで発揮した慣性飛行をはじめたコスモゼロは、真田技師長のナビゲートで大小無数のスペースコロニーの破片が漂う空間をギリギリで抜けていく。

「どの道、ターゲティングをはじめたら敵に探知される・・・
 チャンスは一瞬だけだぞ! 慌てず、急いで、正確にな!」

「了解! 技師長こそ失敗ってのはなしですよ」

 恐怖と緊張を僅かでも解きほぐすつもりで軽口を返した加藤は、パッシブモードのみで作動しているレーダー画面を睨みながら機体を微妙にコントロールする。


「・・・・・・」

「技師長・・・ ちょっと聞いてもいいですかね・・・」

「んん? 何だ、改まって」

 後席でレーダー画面に集中していた真田技師長は、突然の加藤の問い掛けに一瞬肩の力を抜いて何時ものように冷静に答えるが、質問した加藤の方は少し照れたようにためらいながら言葉を続ける。

「いや、技師長はいつも冷静だけど・・・ 怖くないですか?」

「ん? ああ・・・ 怖いさ・・・ 誰だって死ぬのは怖い。
 だからレーダー画面しか見ないようにしてるんだ」

 レーダー画面から一瞬顔を上げた真田技師長は、バックミラーに映った加藤の顔を真っ直ぐ見詰めると少し引きつった笑顔を返す。

「はっはっはっ・・・ 安心しましたよ。 臆病者は俺だけじゃないんですね」

「ははっ・・・ 命知らずの航宙機のエースパイロットが臆病者か?」

「技師長。 ここだけの内緒にしてくださいよ」

 お互いギリギリの生死を賭けた任務に向かう恐怖を曝け出すことで逆に吹っ切れたように笑い合うが、その間にも機体は徐々に近接センサーの反応距離に近付いていく。

〈山本・・・ お前のような勇者にはなれそうもないよ・・・〉


「・・・・・・」

「よしよし・・・ もうちょっと・・・ もうちょっとだ・・・」

「今だ!! 頼むぞ、アナライザー起動!」

 加藤の操縦により背後のデスラー艦に探知されずに大型ミサイルのターゲティング可能距離まで接近したコスモゼロの後席では、ミサイルと計器を交互に睨んでいた真田技師長がアナライザーを起動させるとターゲティング用のビームを発射する。

「任セテクダサイ」
 


「左舷外殻装甲注水完了!」

「中央居住区隔壁全注水完了しました」

 重時空爆発による放射線からの防御力を少しでも高めるためにミサイル爆発を受けることになる左舷外隔壁と中央居住区全周の隔壁に飲料水をはじめ艦内にある全ての水を注入したヤマトは、ワープ準備を進めながらブラックタイガー加藤隊長からの通信を待つ。

『波動エンジン、エネルギー充填120%』

「ヤマト全艦ワープ準備完了」

「ミサイル精密座標来ました!!」

 待ちに待ったコスモゼロからのターゲティング情報を受け取ったヤマトは、太田航宙統制官により直ちに精密座標のリンク作業が行われる。

「ワーププローブ座標入力よろし!」


〈次郎・・・ もう、直ぐそこまで・・・
 手が届きそうなところまで帰ってきたと言うのに・・・〉

 それまで慌しく行っていた最後の準備を終えた男達は、一瞬空いた時間に襲いくる人間的な恐怖とそれぞれに戦っており、ヤマトの舵を握り続ける普段冷静な島航海長の手にも汗が滲んでいる。

「・・・ よし! 島、行くぞ!」

〈この身に換えても地球を、お前を守ってみせる!
 次郎! 強く生きろ!!〉

「んん! ワープ準備よろし!」

 古代の声にそれまでの自身の感情を封印した島は、自分への気合とともに硬く閉じていた瞳を開くと強張る右手をコンソールに伸ばし、最後のワープ準備手順となる時空連動装置の回路を接続する。


 一瞬の沈黙・・・
 第一艦橋には時空連動装置の発する機械的な断続音だけが響いている・・・

 自分自身の死という人間として最も根源的な恐怖に打ち勝った男達は、勇気と言う言葉では簡単に表せない使命感、義務感、連帯感、未練、迷い、諦め・・・ 様々な感情の入り混じったまま混沌とした自身の精神を断ち切るように思い切ると・・・

「ワーププローブ発射!!」

「ワープ!!」

 全ての準備が整った第一艦橋では、古代のワーププローブの発射命令に被さって島航海長のワープ操作が行われると、ヤマトは辛うじて破壊を免れた艦首魚雷発射群右舷三番発射管からのワーププローブの発射と同時に深く傷付いた船体に鞭打って極短距離の精密ワープに入っていく。
 


「・・・・・・!」

「ヤマト・・・?」

「おお〜! ヤマトだ!」

 地球防衛軍司令本部では大型スクリーンで徐々に大きくなっていく敵超巨大ミサイルを声もなく見続けていた人々の視界に、ワープ空間から抜けでたヤマトが全艦大破状態と言っていいほどに傷付き、煙や炎を引きずった姿になりながら尚も巨大なミサイルの前に立ちはだかるように突如として出現する。

「頼むぞ! ヤマト!」

「ヤマト?」

「ヤマト! どうした?!」

 地球で見守る人々の期待をよそに既に全兵装を破壊されているヤマトは沈黙を続けるだけであり、ただその傷付いた身を持って地球の、そして人類の最後の盾となるべく静かに取舵を取ると左舷全面を迫り来る巨大ミサイルの前へ大きくさらす。

「ヤマト?!」


 

−人類滅亡といわれる日まで、あと33日・・・ あと33日−
 

 
 Episode 6.4 間に合った帰還
The earth return in time


 左舷をさらしたヤマトの影にスロットルを非常出力にまで押し込みっぱなしにした加藤の操縦するコスモゼロがエンジンを全開にして飛び込んだ一瞬後、超新星爆発のような宇宙空間全てを包み込むような強烈で巨大な途轍もないエネルギーの爆発が起こり、ヤマトはもちろん地球やデスラー艦もが真っ白な光の渦に飲み込まれていく。

 永遠とも思われる一瞬の時間の後、太陽系は何事もなかったような静寂に包まれ全てが無音の世界へ戻っていく・・・


「ヤマト・・・」

「ヤマトは?」

 地球防衛軍司令本部の人々の視力と意識が回復するに連れてそれぞれに活動を再開したが、極限の状態にありながら、いや極限の状態にあるために自分の状態や安全よりもヤマトの安否に思いを巡らせる奇妙な心理状態に陥っていた。

「あれは?!」

「ヤマトだ! ヤマトだぞ!!」

 喜びに沸き返る地球からは爆発の影となった右舷側しか見えないが、左舷の装甲板全てが脱落して吹き飛んだ状態で辛うじてフネとしての形を残したヤマトが左舷装甲より漏れて凍った板状の氷をまとって左舷側へ大きく傾いた姿勢で無音の宇宙空間を漂っていた。


*   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *


 赤い非常灯に鈍く照らされた第一艦橋では生命反応を感じさせない静寂の中、機器類が稼働していることを示す計器類の小さな光と空気が残っていることを示す微かな音が感じられるが、奇妙なことに全艦に鳴り響いていた放射能緊急警報は全く聞こえず、低音とも高音ともつかない構造材の軋む不気味な音だけが船体の奥底から鈍く響いていた。

『ザザッ・・・
 ・・・マト・・・ ヤマト聞こえるか?
 こちら地球防衛軍司令本部! ヤマト応答せよ!』

 その静寂の中、突然地球からの音声通信が入り静まり返った第一艦橋に響き渡ったが、その通信に答えるものは誰一人として居ない・・・


*   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *


「ヤマト! ヤマト応答せよ! ヤマト!
 こちら地球防衛軍司令本部! 応答せよ! ヤマト!!」

「ヤマト応答ありません!!」

 地球防衛軍司令本部ではヤマトに対する必死の呼び掛けが続くが通信機は空しく空電を返すだけであり、一時は喜びに沸き返った司令本部のスタッフにも絶望的なムードが広がっている。

「作戦参謀! ヤマト救出に出せるフネはないのか?!」

「はい。 最短16時間の準備で巡洋艦くまのが出航可能ですが・・・」

 何としてもヤマトを救出したい藤堂長官は軍艦の派遣も検討するが、地球のエネルギー不足を補うための発電施設として使用している艦船を出航させるためには長い時間が掛かる。

「16時間ではヤマトが落下してしまうぞ!」

「長官! ヤマトに自沈指令を!」

 心情的には、人類を救う命を賭けた29万6,000光年という途方もない苦難の長旅を達成して、今また文字通り自身と引き換えに地球を守ったヤマト全乗組員を犠牲にする自沈指令など送れるわけもないが、地球防衛に責任を持つ藤堂としては最後には決断を下さざるを得ない。

「・・・・・・」

「長官!!」

 ヤマト地球落下の危険が差し迫るなか選択肢は確実に狭められており総参謀長は長官の決断を迫るが、藤堂長官は一縷の望みを賭けて今一度の通信連絡を命じる。

「もう一度ヤマトに通信を送れ」

「長官?!」

 激しい剣幕で決断を迫る総参謀長も藤堂長官の揺るぎない態度に気迫負けし、背後に控えた通信参謀を振り返るとヤマトへの再度の通信連絡を命じる。

「分かりました。 もう一度ヤマトへ連絡を取れ!」


*   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *


 『こちら地球防衛軍司令本部! ヤマト応答せよ!
 ヤマト聞こえるか? 応答せよ! ヤマト!!
 応答してくれ!! 頼む! ヤマト・・・』

 地球からの通信だけが鳴り響く第一艦橋にエレベーターの作動する微かな音が聞こえてくると、僅かな時間差があってエレベーターの扉が開く空気圧の逃げる音とともに人の気配が感じられる。

「艦長代理! 島さん!?」

『ヤマト! ヤマト応答せよ! ヤマト!』

「こちら宇宙戦艦ヤマト相原通信士。 聞こえます!」

 第一艦橋へ上がってきたヤマトの中央居住区に避難していた南部砲雷長、相原通信士、林航海士、森雪、斉藤らは、それぞれにヤマトの機能を少しでも回復するべく全力を上げていく。

「島さん!!」

「航海長!!」

「林三尉! 舵を取りヤマトの躁艦を復旧しろ!」

 航海長席のコンソールに突っ伏して動かない島を助け起こした南部砲雷長は、口調を改めると横にいる林航海士に航海士席でヤマトの躁艦を取るように命じる。

「了解! 林航海士、ヤマトの舵を取ります!」

「よし! 掛かれ!」

 敬礼から直った林航海士が左舷の航海士席に着くのを見送った南部は、ぐったりと力なく倒れている島航海長に顔を近づけると大声で呼びかけ続けるが島は何も反応を示さない・・・

「島さん! 島さん! しっかりして下さい!」


「古代さん!!」

 艦長席の右影にうつ伏せで倒れていた古代を発見した森雪は、悲鳴に近い絶叫を上げると慌てて駆け寄り自分の膝へ抱き起こすが、倒れた古代は何の反応も示さない。

「古代さん! 古代さん! 死んじゃダメ!」

 古代をはじめ第一艦橋へ残った人たちはどう見ても致死量を遥かに超えた放射線を全身に浴びており、生きていることを期待するのは神の奇跡を期待するしかなかった。

「古代さん! 目を開けて・・・ 私をひとりにしないで・・・」

「・・・・・・」

「古代さん・・・ あなたの居ない世界で私はどうすればいいの・・・」

 森雪の頬を流れた涙が古代の目蓋にポツリポツリと落ちていく・・・


「・・・・・・」

「んん・・・」

 流れ落ちた涙に反応したように、古代の目蓋がピクリと動くとともに両手の指先が僅かに痙攣する。

「古代さん?!」

「んん? ゆ、雪・・・ みんな・・・ 無事だったのか?」

 目を開いた古代に続いて島航海長や太田航宙統制官が意識を回復して第一艦橋では驚きと喜びが渦巻いているが、相原通信士が苦笑いを必死で堪えながら通信回路を開くとコスモゼロからの場違いな音声通信が第一艦橋へ流れる。

『おい! 早く俺たちを中に入れてくれよ! ヒーターが止まって凍えちゃうよ!!』

『シバラク休日ガ欲イデス・・・』

 赤茶けた地球を背景としたヤマトの周囲空間には破損したヤマト中央倉庫よりこぼれ出た大量のガミラシュームが漂っており、膨大な放射線を吸収すると鈍く輝いていた・・・


「地球防衛軍司令本部! こちら宇宙戦艦ヤマト!
 これより地球へ帰還致します!」

「ヤマト、地球へ向けて両舷半速〜 面舵一杯〜」

「ようそろー!」


 

−西暦2200年9月6日14時23分 宇宙戦艦ヤマト地球帰還−

生存者67名、戦死者47名、不明者12名

苦難の旅を乗り越えた若者達によって
地球は救われた・・・
 

 
Space Battleship ヤマト 2199

沖田十三
古代進
森雪
島大介
真田志郎
徳川彦左衛門
佐渡酒造
南部康雄
太田健二郎
相原マイコ
加藤三郎
山本明
斉藤始
薮助治
アナライザー

・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・

仲代達矢
藤原竜也
新垣結衣
緒形直人
柳葉敏郎
井川比佐志
香川照之
松山ケンイチ
二宮和也
マイコ
波岡一喜
斎藤工
金児憲史
水上潤
緒方賢一(声)
CAST
藤堂平九郎
総参謀長
古代守
土方竜
山南修
能村次郎

スターシャ

デスラー
ドメル
シュルツ
ガンツ

ナレーション

・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・

・・・・・・

・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・

・・・・・・

奥田瑛二
高岡建治
阿部寛
野崎海太郎
勝野洋
反町隆史

相沢紗世

伊武雅刀(声)
大塚明夫(声)
島香裕 (声)
緒方賢一(声)

遠藤憲一(声)

原案・原作
シナリオ
音楽・原曲
主題歌・挿入歌
監督・総指揮
STAFF
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・

西崎義展
Karasu
宮川彬良・宮川泰・羽田健太郎
ささきいさお・川島和子
樋口真嗣
(C)2011「Space Battleship ヤマト 2199」製作委員会
Back Next

Reflect 検索
リフレクト サイト内をキーワードで検索できます。
Copyright(C) 2002, Karasu ver2.70
カウンター管理
ブログ管理