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Space Battleship YAMATO Anecdote 4
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Space Battleship ヤマト 2199-2212

伝説の戦艦
 Anecdote 4.0 観戦武官
Watching a game military officer


〈これでは、この戦艦の艦長が出撃するたび戦死しちまうのも無理はないな〉

 さすがに何時もと違い濃緑のガミラスグリーンを基調とした統合空間機甲軍上級兵科士官用制服を服務規定通りに着こなしたフラーケン大佐は、長年次元の狭間を隔てた亜空間で敵の考えの真実を探り続け、命のやり取りをしながら生き延びてきたベテラン次元潜航艦乗り ― サブスペースノート ― 特有の思慮深い思考の奥底でそう思っていた。
 敵との殴り合いが間近に迫っているのに地球連邦軍防衛艦隊宇宙戦艦ヤマトの首脳部は誰一人として危険な直視指揮所である第一艦橋から離れる素振りすら見せようとはしなかった。

〈せっかく局部銀河群でも最強級の宇宙戦艦に乗っているのに・・・〉

 遮る物とて何一つない無限に広がる暗黒の宇宙空間、数千宇宙キロ(数光秒)という長大な戦闘距離が当たり前となっている現在、肉眼で直接目標を見ることなどできるわけもないのに、なぜわざわざ強化船外服も着ずに危険な第一艦橋で戦闘指揮を取り続けるのか、合理性を重んずるガミラス軍人のフラーケンには全く理解ができなかった。

 彼らの考える艦船の防御力には中に乗っている人員は含まれていないらしく、地球脱出船として計画が開始された名残として過剰ともいえる防御機構を備えており、既に幾多の戦闘により証明され伝説とまでなっている既知の宇宙でも最強といわれるヤマトの打たれ強さに対して、被弾すれば即そのまま死に直結する地上にいるのと変らないラフな艦内服姿の乗組員は何なのか?

〈それほど、このフネを信頼しているというのか?〉

 そうした気分が周囲にも伝わったらしい。
 彼には理解できない地球語(ニホン語?)の命令が飛び交った後、チラリと彼の方を向いた通訳を兼ねる船務長の佐藤大輔一尉が母音の崩れた聞き取りづらいガミラス語で言った。

「コマンダー(代将)、CICで観戦されてはいかがですか?」

 古く海軍時代より続く伝統により、軍艦内に二人のキャプテン(大佐=艦長)が居てははならないためにフネに便乗している大佐は先任後任に関わらず儀礼上、司令官と呼ばれる(だからといって戦隊の指揮権が与えられるわけではなく、あくまでも儀礼上の呼称であるが)ことになる。

「ノーサンキュー」

 彼は断固たる表情で断った。

〈誇りあるガミラス軍人が同盟星軍人の背後に隠れるなど出来るわけもない・・・〉

 まてよ、彼らも艦橋よりCICの方が安全だということくらいは知っているのだ。
 恐らくは、その方が便利だということも十分に分かっているのだろう・・・

 そうなのか、と彼は思った。

〈連中が艦橋にこだわる理由はこれなのか?〉

 確かにCICでは味わえない宇宙戦士としての感覚に違いない。
 きっとこの宇宙戦艦で死んだ三人の艦長も俺と似た感覚に達したから、ここで最期まで戦い、敵弾を浴び戦死したに違いない。

『エネルギー充填120% 機関切替よろし』

『前衛護衛艦、艦首軸線よりの退避を確認。 全艦第四警戒航行序列よろし』

「総員、対ショック対閃光防御!」

「発射5秒前・・・4・・・3・・・2・・・1・・・」


「Hassya!」
 


 艦長が叫び終わる前に艦首で発生した巨大なタキオン粒子の奔流が、周囲の空間を歪ませ時空を揺るがすほどの膨大な次元波動エネルギーをともなって艦橋に強烈な閃光と魂を揺さぶる衝撃を伝えた。

「ハドーホー!」

 フラーケンは網膜と鼓膜に焼き付いたエネルギーに男としての何かを感じ、叫んだ。
 それを聞いた艦橋の人々が彼に本物の笑みを向ける。
 オリエンタル・スマイルではない。 大事な玩具を友達にみせびらかした子供のような顔だ。

 遮光ゴーグルを外した艦長が多少クセがあるが流暢なガミラス語で言った。

「我らがヤマトクラブへようこそ! バレ・フラーケン代将」


 ガルマン・ガミラスにとっても長年の宿敵となる、局所銀河群最大の銀河系である遥かアンドロメダより迫りくるガトランティス帝国空間侵攻兵団の残敵が頑強に立て篭もる、この要塞化された小惑星帯を掃討する次元波動投射砲の発射に伴う衝撃に、奇妙な経緯により連絡将校として乗り組んだ地球連邦軍遣少マゼラン艦隊旗艦宇宙戦艦ヤマトで観戦武官となっているフラーケンは、ヤマトに関わる自らの不可思議な運命に心の中で秘めやかに苦笑いを上げていた。


 

−デスラー暦116年58日、ガルマン・ガミラス統合空間機甲軍大佐ゲルルト・フラーケン記−
 

 
 Anecdote 4.1 カミヨ計画
The Ark planr


「いまさら役に立たないことの分かっている戦艦を造ってどうしようというのです?
 そんな貴重な資材と時間があるのであれば一個護衛隊群を建造できます」

「分かっているよ・・・ 大山君」

「なら、どうして・・・」

 遮るものとて一切ない広大な宇宙空間で射程距離の長さと投射エネルギー量を競う大艦巨砲主義へとひた走っていた宇宙艦隊戦力の方向性に一石を投じた、画期的な「磯風」型艦隊随伴誘導弾搭載護衛艦の基本設計を行った天才科学者であり造船設計者である大山敏郎技術二等宙佐の小柄な身体と向かい合って座った地球防衛軍司令長官藤堂平九朗宙将は、その流れに逆行する大型宇宙戦艦の設計企画の話を持ち込んでいた。

「これからの話を聞けば、君は今後永遠に24時間体制の厳重監視下に置かれることになる・・・」

「俺の性格なら、長官は十分以上にご存知でしょう?」

 旧知の間柄である大山の権力や権威に屈しない型破りな性格を十分に知っている藤堂は、大山の言葉を呑みこくように深く頷き、僅かにためらったようにゆっくりと目線を上げながら言葉を切ると、静かに誰にも明かせない極秘の話を語りはじめた。

「今回計画されている新戦艦は、極秘のガミラス火星基地攻略決戦兵器として情報統制され建艦計画が進められるが、実際には日本統合防衛艦隊はもちろん地球防衛軍にも属さず、連邦政府上層部と我々極東軍管区司令本部の一部人間以外には本当の性能仕様を一切公表せずに建造される。
 このフネは戦艦であって戦艦ではない・・・ 終始正式な軍艦籍には登録されず、ただ単に方舟(The Ark)とだけ呼ばれ、極秘中の極秘カミヨ計画の核心となるのだ」

「このフネは情報保安上宇宙戦艦と呼称されるが、実際には恒星間武装探査輸送船・・・
 選ばれた人々を乗せて地球を脱出する人類最後で唯一の救命船 ― 方舟となるのだ」

「何!! 連邦政府は地球を見捨てるというのか?!
 それに16億人の一般市民をも・・・」

 横紙破りが通り相場の大山が逆に驚きの声を上げる中、藤堂は全ての人間的感情を捨て去ったように背後にある巨大な権力と重大な責任を感じさせる重々しさで淡々と説明を続ける。

「そうだ・・・」

「地球脱出? 種の保存だぁ?! ふざけるな!!!
 一握りの人間の地球脱出に全ての資源と戦力を使って、残された一般市民はどうする?!
 見殺しか? 16億人を全て見殺しなのか?! お前たち、それでも人間か?!!
 何様のつもりだ?! 全能の神にでもなったつもりでいるのか!!」

 大山の厳しい非難を真っ向から受けても全く怯むことなく対峙する藤堂は、語気を強めて腹の据わった眼差しで見詰め返しながら一語一語を刻み付けるようにゆっくりと語り掛ける。

「大山君! 現実を見るんだ!! 我々には、もはや選べる選択肢などないのだよ・・・
 私は、僅かでも人類が生き残ることができるのならば喜んで悪魔にでも魂を売る!
 只の正義では・・・ 単純な善悪論では、もはや地球人類を救うことはできない・・・」

「・・・・・・」

「それは、君にだって十分に分かっているはずだ」


「俺たちは何だ? 地球を救えない、救う気のない地球防衛軍とは笑わせる・・・」

 血走った目で見詰め合った無言の時から、無理やりに感情を抑えたような大山の低い声が発せられる。

「ボケて任官時の宣誓を忘れたのか?! 自らの誓いが守れないなら腹を切れ!!」

「わたしが皺腹を切って人類が救われるなら苦労はない。 喜んで切らさせてもらうよ」

 藤堂を攻め立てる大山とて分かっているのだ、最早どう全能力を凝らせて考えても地球人類を救う方法はない・・・ そのどうしようもない閉塞された鬱積を藤堂へぶつけているだけで、地球脱出計画へ理を感じる自分の深層での考えを自身で許すことが出来ず認めることも出来ずにいた。

「大山君・・・」

「安全な穴倉の奥底で、防衛軍人が一般市民を見捨てて逃げ出す算段を手伝えだと?!」

 贖罪・・・ 地球防衛軍の高級技術士官として敵対するガミラスに対抗する戦力をどうしても整備することが出来ない、その万死に値する結果に精神を痛められ続いていた大山は、激しく攻め立てる言葉とは裏腹に藤堂の硬い決意を秘めた瞳に徐々に引き込まれていた。

「大山君!」
 


「ヤマトか・・・」

 帝国主義時代末期、最後の植民地を巡って列強諸国と対立した新興有色人帝国。
 敗色濃い西暦1945年4月7日、艦隊特攻として失われた悲劇の戦艦・・・
 ついに自らの祖国と国民を救うことの出来なかった史上最強の戦艦・・・
 3,000名を超える英霊とともに戦火の中で沈んだ人類最後の水上戦艦・・・

〈地球人類最後の種の保存を託すフネに、この名が相応しいのか?〉

 厳しいという言葉では簡単に表せないほどの絶望的状況に陥ってる現状に、設計においても様々な制約を課せられた困難な長時間の設計作業に疲れた大山は、コンピューターモニターの光だけに照らし出された静まり返った部屋で下らない考えを弄んでいた。

〈他に名の付けようもないか・・・〉

 地下都市の奥底へも刻々と浸透を続ける放射能汚染による待ったの効かない時間的制約もあり、今回の計画は設計企画と僅かに時をずらすようにして建造ドックとなる地盤の整備作業と実際のフネの建造準備等が同時平行して行われており、全ての計画・設計・開発・調達・土木・建設・建造・艤装・整備が延滞ややり直しなど一切許されない信じられないほどタイトなスケジュールに組まれた困難なものであった。

 20世紀末に企画された計画に続いて、21世紀に実際に行われた引き揚げ作業が資金難によって中断されたまま放棄されていた250年前の水上戦艦を人類の未来を掛けた恒星間移民宇宙船へと改造する。
 普通の状態で聞かされれば今時の小学生でも笑い出しそうな荒唐無稽な漫画のような計画・・・

「戦艦大和・・・」


*   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *


「あんな鉄屑の塊を改造してどうしようと言うんだ?!」

「なに、実に単純な話だ・・・」

「現在の防衛軍には月面のオニヅカ工廠を除けば4万トン級以上のフネを建造可能な造船所はない。
 よって、造船ドックから作らなきゃならないが、時間的に地下深くに作っていたのでは間に合わない・・・
 しかし、地表近くに作ったところで直ぐにガミラスに発見されてしまうだろう 」

 文字通り不眠不休で進められるフネの設計作業とともに、実際の造船に先立つ建造ドックの建設作業が急ピッチで行われている九州沖地下の方舟計画実施本部では、大山を中心とした少数の幹部メンバーが次々ともたらされる難題と調整、それにともなう不眠不休の果てしなく続く論議を行っていた。

「何しろ、我々には絶望的に時間がないのだ」

「そうは言っても、あんな物を如何しろというんだ・・・」

 計画実施本部の壁面に大きく設置されているモニターに表示された方舟・・・
 茶色い砂に半ば埋もれるように見え隠れする朽ち果てた巨大な戦艦の残骸・・・

 本来は大きく三つに分かれて折り重なるように原形を留めないほどに破壊されて沈んでいた船体を、過去に行われた引き上げ準備として艦首部に続けて引き起こして並べられた艦中央の艦橋部が、乾き果てた海底からやや右斜めにそそり立つように放射線に溢れた地表へ露出していた。

「しかし改造といっても、実際にはカモフラージュに使う外側の錆びて朽ち果てた薄皮一枚を残して艦底部の地下空洞に設けられた建造ドックからアプローチしてくり貫くように新たな船体を建造する、それは今までに全く経験のない困難な作業となるだろう・・・」

「3,000柱に達する英霊達の弔いも十分に行う必要があるな・・・」

「ああ・・・ 二重の意味でな・・・」

 方舟建造の時間を得るためにガミラス火星基地へ全力攻撃を掛ける最後の地球艦隊・・・
 そして、方舟の発進を欺瞞、援護するために囮として出撃する残余の損傷した艦艇・・・
 数千人の名を知られることもない英雄達の屍を乗り越えて未来へと発進するのだ。

〈16億人を見捨てて得られる血塗られた未来への微かな希望・・・〉

 もしも、それを希望と呼ぶことが許されるならば・・・


「ん? どうした?!」

『0-3番試験立抗で小規模な崩落発生! 現在状況確認中!』

 方舟建造に先立つ「建造準備および発進準備工事」による予備地質調査が続けられている坊ノ岬沖の岩盤部では、民間企業の前田建設株式会社を中心とした数社の共同企業体が前例のない困難な作業を行っていたが、失敗を許されない命懸けの作戦なのは防衛軍も民間企業も全く違いがないのだった。

 この地球人類の命運を掛けた後のない緊急プロジェクトは、大小問わず全ての民間土木建設企業を動員して休むことなく続けられている地下都市の伸深度掘削作業と同時平行して、絶望的に不足する残り少ない人員を奪い合うようにやり繰りして24時間体制の突貫作業で進められていた。


 今はただ、出来ることを全力で行うだけだ・・・


 

−人類滅亡といわれる日まで、あと999日・・・ あと999日−
 

 
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